フードロスを減らすビール「トースト(Toast)」
フードロスとは、本来は食べることができたはずの食品が廃棄されること。国際連合食料農業機関(FAO)の報告書によると、売れ残りや食べ残し、期限切れ食品などにより、毎年、世界の生産量の約3分の1にあたる13億トンの食料が廃棄されているという。
イギリスには、このようなフードロス問題を解決することを目的としたクラフトビール醸造している人がいる。トリストラム・ステュワート(Tristram Stuart)氏がその主人公で、「フィードバック(Feedback)」という団体を立ち上げ、15年以上にわたり、フードロス問題に取り組んできたという。
イギリスでは、主食であるパンの廃棄率が44%にも達し、どのパン屋さんもパンの廃棄に悩まされていたが、トリストラム・ステュワート氏が、古代のメソポタミアで、砕いたパンに水を加えて発酵させることでビールを作っていたことに着眼し、廃棄されるパンでビールを作ることになった。
トリストラム・ステュワート氏は、イギリスのビール醸造所と一緒に、大麦の一部をパンで代替してビールを作る製法を確立し、商品化に成功する。その商品こそ「トースト(Toast)」だ。2016年に販売を開始したイギリスでは好評で、販売開始から15カ月で、3.6トンものパンを再利用できたという。
売上実績を金額や本数ではなく、再利用されたパンの量で表しているのは、お金を稼ぐことではなく、フードロスを減らすことを目的としているため。「トースト」はまだ利益を出すまでは至っていないが、黒字転換した際には利益を全て自身が運営するNGO団体「フィードバック」に供出し、フードロス問題の解決のために使う予定だという。
あまり日持ちしない上に利益率の低いパンを、クラフト・エールという長期保存できて利益が出る製品に変える方法を発見したという点でも、社会問題の解決に直結するという点でも、「トースト」は面白い且つ素晴らしいアイディアだと思う。こういうアイディアがどんどん出てきて欲しい。
個人的には、パンの種類によって味がどれだけ変わるのかが気になっている。それなりに影響するのであれば、最近はやりのプレミアム食パンでビールを作って飲んでみたい(プレミアム食パンは売れ残らないと思うので、フードロスの解決にはつながらないと思うけれども)。
「トースト(Toast)」メモ
- イギリスでフードロス問題の解決を目的として作られたクラフトビール。
- 古代メソポタミアで使われていたビール製法からアイデアを得て、大麦の一部をパンで代替してビールを作っている。
- ビール1本あたり、食パン1枚分のパンが消費されている。
- 提携先のパン屋さんから廃棄予定のパンを提供してもらい、そのパンでビールを作ることで、フードロスを減らすことに貢献している。
- 販売開始から15カ月で、6トン分の廃棄パンを消費している。