分子の組み合わせで作るウィスキー「グリフ(Glyph)」
ウィスキーについて語れる男はカッコいい。私もそんな男に憧れるし、なりたい気持ちもある。
ウィスキーについて語れるようになるには、色んな種類のウィスキーを飲んでみなければならない。また、なかには何回か飲んでみたら癖になるものも存在するので、同じ銘柄のものを複数回飲んでみる必要がある。
しかし、ウィスキーは、ワインと同様、銘柄や年数によっては、相当高い物も存在する。もともとお酒が好きで、お酒に注ぎ込むお金を惜しまない人には問題にならないが、私を含め、お酒がそこまで好きでない人にとっては、そこそこ負担に感じる金額が必要になったりする。
そのような理由で、「ウィスキーについて語れる男」は、単なる憧れに留まっているが、数年後には、色んなウィスキーを安価に楽しめる時代が訪れるかも知れない。アメリカのスタートアップ「エンドレス・ウエスト(Endless West)」が、安価かつ短期で作れるウィスキー「グリフ(Glyph)」を開発したのだ。
通常、ウィスキーを製造するには、醸造、蒸留、熟成という時間もお金もかかるプロセスを踏む必要があるが、「グリフ」は、それらのプロセスを踏む代わりに、高級ウィスキーの分子構造を解明し、植物や酵母から抽出した分子を用いて同じ分子構造を再現することでウィスキーを作りだしている。
現在は、サンフランシスコ近郊など、限定的な地域で販売されており、値段は約40ドル程度。スパイス、シェリー、バニラ、スモークなどの淡い風味までも再現しているなど、味に対する評判が良く、他のウィスキーに比べて売れ行きも良いという。
この製法の場合、分子構造がいわゆるレシピの代わりとなるが、現在の技術では正確な分子構造解明には、結構な時間を要するようで、色んな種類の人工ウィスキーに出会うのはもう少し先のことになりそうだ。
人工ウィスキーが普及し、私が「ウィスキーについて語れる男」になれる日も待ち遠しいが、飲料や液体を分子の組合わせで再現する技術の普及も非常に楽しみだ。製法が企業秘密になっているコカ・コーラを再現してみるのも面白いし、高麗人参エキスなど単価が高い栄養ドリンクを再現し、安価に普及することができたら人々の健康がより増進するかもしれない。
「グリフ(Glyph)」メモ